受動喫煙防止条例案への意見書(2/3) 青森県タバコ問題懇談会 | 青森県タバコ問題懇談会BLOG

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                  令和2年(2020年)2月3日
青森県健康福祉部 有賀 玲子  部長

                青森県タバコ問題懇談会代表世話人 
                   山崎照光 鳴海晃 久芳康朗

        受動喫煙防止条例案への意見書

青森県タバコ問題懇談会では、改正健康増進法が受動喫煙による健康被害から県民および国内外からの来訪客を守ることができないことから、2019年2月に6項目からなる「受動喫煙防止条例の制定に関する要請」を県知事および県議会議長に提出しました。その6項目に沿って「受動喫煙防止条例骨子案」に対する意見を述べさせていただきます。

要請1:タバコ規制枠組み条約(FCTC)の受動喫煙防止ガイドラインで定められた屋内全面禁煙の3条件[分煙不可・例外なし・罰則あり]の早期実施を目標にして下さい *1

意見1:法律の不備を補うための対策であることから、ガイドラインではなく条例を制定する方針にしたことは評価できます。ただし、いずれの対策も努力義務に留まっており、罰則規定がないことから、実効性に疑問が残ります。また、飲食店における例外措置が残ったままであることから、条約の3条件の早期実現は難しいと言わざるを得ません。

要請2:喫煙可能な飲食店では従業員の受動喫煙を防ぐことができないことから、従業員を雇用している飲食店は全て屋内全面禁煙にして下さい  *2

意見2:既存の小規模飲食店に対して「自主的な取り組み」を求めるだけでは、従業員への受動喫煙をなくすことはできません。東京都や千葉市などと同様に、従業員を雇用している飲食店は例外なく全面禁煙とすべきあり、条例案の変更を求めます。

要請3:喫煙室の設置は受動喫煙防止対策としては不十分で、FCTCガイドラインでも認められていないことから、新たな喫煙室の設置は推奨せず、既存の喫煙室を撤去して屋内全面禁煙にする施設に対して助成金を交付するようにして下さい *3

意見3:全体として、法律で認められている新たな喫煙室の設置を求めない内容となっていることは大いに評価できます。条例の中ではなく別の施策でも構わないので、要請で求めたような喫煙室撤去に対する助成も政策の検討課題に加えてください。

要請4:加熱式タバコもタバコ製品であり、紙巻きタバコに近いニコチンを含有し、その他の有害物質も含まれていることから、紙巻きタバコと同等の規制を行って下さい

意見4:飲食店以外の施設において加熱式タバコ等を紙巻きタバコと同等に扱うとした内容は評価できます。ただし、飲食店において飲食可能な加熱式タバコ専用室の設置について努力義務としたことは評価できません。罰則を設けずに勧告・公表・命令という手段によって実効力を確保しようとしているのであれば、「設置しないこと」としなければ意味がありません。努力義務であれば法律違反でも条例違反でもないということになります。

要請5:学校、教育機関、医療機関、行政機関、児童福祉施設を含む社会福祉施設においては、三次喫煙まで防止し、教育・啓発も目的として敷地内全面禁煙にして下さい *4

意見5:当懇談会が毎年実施している調査では、公立の小中学校は全市町村で敷地内禁煙となっており、大学も建物内禁煙が1校、敷地内禁煙だが学生寮のみ建物内禁煙が1校を残すのみとなっています。「努めなければならない」という表現は、現実よりも後退したレベルと言えます。また、庁舎および議会棟の対策が全国的に問題になっており、県内でも対応が分かれています。民間施設に法律以上の対策を求める条例を制定する以上、行政機関および議会は自ら率先して対策を推進すべきです。以上により、学校の項目に大学も含めて、行政施設の項目に議会棟を加えた上で、「設置しないこと」とすべきです。

要請6:家庭、自動車、通学路、公園、屋外運動施設などにおいて、子どもや妊婦が受動喫煙の被害を受けていることから、これらを可能な限り防止する対策を取って下さい *5

意見6:条例案において、特に子ども、妊婦、健康上の配慮が必要な者に対する規定を設けたことは高く評価できます。また、自動車内の喫煙について別に「喫煙してはならない」と表現したことは評価できますが、この項目について実効性を持たせるためには、「勧告・公表・命令」といった手段により県内全域を日常的に監視して指導することが難しい以上、諸外国の前例と同様に罰則規定を設けることが必要と考えられます。

追加意見1:この条例案がどのような形で議決されるにせよ、世界の常識であるタバコ規制枠組み条約の3条件[分煙不可・例外なし・罰則あり]から後退した内容になるものと考えられます。その間にも、海外からの観光客、スポーツ大会、各種会議などで青森県の規制の遅れがあらわになるはずです。条例制定後に、可能な限り短い期間(2年程度)で見直し作業と条例の改訂を行うことを、条例文に組み込むべきです。

追加意見2:今回の検討会、条例案、公開ヒアリングに至る一連の経緯について、県民に対する情報公開、透明性が全く不足しております。この条例案(たたき台)についても、第1回のヒアリングが終了した時点でも、ホームページで県民が検索して見ることができない状態にあります。他の都府県と同じように、議事録等も含めた全面公開を求めます。

追加意見3:今回のヒアリングではタバコ産業側の意見も聞くことになっているようですが、これはWHOタバコ規制枠組み条約に明らかに違反します。受動喫煙防止対策を検討する際に、タバコ産業側の意見というのは、規制をできるだけ緩やかにさせることによって、タバコ販売の減少を防ぎ、県民への受動喫煙防止を阻害し、さらには喫煙率の減少・健康寿命の延伸を妨害すること以外にはあり得ません。タバコ産業に対する対策は、例えば八戸市におけるワイン用ブドウへの転作支援のように、別に議論すべき問題です。今回のヒアリングにおけるタバコ産業側の意見は、全て検討の対象外とすることを求めます。

以上

*1:たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約 WHO Framework Convention on Tobacco Control
*2:東京都受動喫煙防止条例に準ずる
*3:千葉市受動喫煙防止条例および2018年度9月補正予算による助成制度に準ずる
*4:秋田県受動喫煙防止条例(仮称)に係る「基本的な考え方」(2018年12月現在)に準ずる
*5:東京都子どもを受動喫煙から守る条例に準ずる